Interview

インタビュー

受け継いだ歴史を次の世代につなげていく

1990年入社

1990年 新卒入社 
西日本テクニカル室 室長
新卒で入社後、大阪と福岡で特注照明設計を手掛けるTECに所属。2021年より同部門を含めたテクニカルチームのマネジメントも手掛ける。
※2021年インタビュー

一発勝負の世界

新卒での配属から現在に至るまで、一貫して特注品設計製作の部署TECで仕事をしています。大阪と福岡の転勤の経験はあるものの、多くの経験を大阪で積み、浪速気質に鍛えられ今の自分があると思います。華やかなバブル期はありとあらゆる場所のシャンデリアを設計し、百花繚乱の様は今から思えばとても贅沢で貴重な経験でした。また近年の急速な光源の進化による変化と対応が柔軟に出来たのもTECが培ってきた技術と精神が支えてくれました。

この仕事の魅力はひとことで表すと「一発勝負」。カタログ商品と違い特注器具の場合、短期間で創り上げる使命があります。顧客やデザイナーと直接話せ、器具の機能や使用環境も明らかで、そのデザインを決める主導権を握れる事も多いですが、検討を重ねる時間やコストの余裕は限られていて、《一発》and《出たトコ》勝負をする事が殆どです。そう言う意味で技術と経験で裏付けられた、それ相当の覚悟も必要です。

変わらなければいけない大きな責任

YAMAGIWAは2011年企業再生支援機構から支援を受け、更に2013年にMARUWAグループの傘下に入ることで、現在の事業を継続しています。国の支援を受けることになった、その事が私自身のキャリアのターニングポイントになっています。当時の「ブランド力」「照明ソリューション力」「優良な顧客基盤」「国民文化・生活の質の向上」等という経営資源が公に認められた事を改めて認識し、その責務を果たさなければならないと思った瞬間でした。この出来事が私に確固たる使命を感じさせると同時に、絶対に立て直さなければならないと強く思いました。

様々なエピソードをもつ復刻照明

古い物を後世に残す手法は、朽ち果てる寸前の物を何とか手を施して残すのか、当時のデザインを再現して新規で製作するのか、手段・方法は様々です。しかし、我々が手がける復刻事業の殆どは建物の保存が発端で耐震補強などの要求が付き物です。いかにして、器具の寿命を延ばし安全を担保しながら最新の光源に変え、美しさと強さを取り戻してあげられるかが腕の見せ所であり、完成した建物の空間にバッチリ、ハマったところを見るのが醍醐味でもあります。

長年手がけている復刻事業には様々なエピソードがありますが、心に残っているのは『奈良ホテル』の事例です。通常、復刻照明の場合は予算ありきで範囲や工法を決めるのですが、ホテル側の要求は安全が最優先でした。その為の安全対策には費用がかさみ、当初の予算とは大きな開きがありました。しかしながら、施主様の深いご理解により予算面をクリアし、半端なことは決して出来ないと強く責任を感じました。おかげさまで細部に至るまでこだわることが出来、双方ともに非常に満足できるものが出来上がったと思います。

受け継いできた経験をつないでいく

諸先輩方の築いてきた技術力やポリシーを絶やすことなく後輩に受け繋ぐ事が私の使命であると考えます。先ずは人材育成ですが、現在会社をあげて人材育成プログラム等に取り組んでいる好機でもあり、TEC独自でも個々の技術力のスキルアップを進めています。その中でベテラン世代は、過去と同様のミスを後輩が起こさないように道標をつくることが役割だと思っています。現在、過去のトラブルやクレームの資料、それが反映された改善の資料など、私自身が受け継いできたものを埋もれて紛失させないように再編纂を進めています。こういったことの積み重ねが、小さなことから大きなことまで伝えていく機会になればと考えています。今は実感できなくても、トラブルに見舞われた時に思い出してもらいたい、或いは後輩が陥りそうになったら、手を差し伸べることも私達世代の責務だと思っています。